- 2017/05/26 作成
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概略
分かっているようで分かっていなかった、そんな内容をまとめておく。
先に断っておくが、このページの記述はあまり当てにしないでほしい。
「だなぁ」 vs. 「だなあ」
突然だが、「~だなぁ」 と 「~だなあ」、どちらが正しいだろうか。SNSや掲示板のような砕けた表記が許される場ならよいが、きちんと公開する作文・エッセイでは一体どちらを使ったらよいだろうか。
適当に検索してみると、知恵袋でいろんな人がいろんなことを言っている。みんな答えがバラバラであまり当てにならない。
上記のサイトには次のような意見が。
- 「だなあ」が正式な表記、あるいは望ましい
- 「だなぁ」の方が高頻度で用いられる、 発音からして「だなぁ」が正しい
- どちらが正しいとは決められない、どちらでもよい
- むしろ「だなー」「だな~」「だな…」でも何でもよい
- そもそも「だなぁ」「だなあ」は間違いで、「だな」が正解
はてさて、これは一体どうしたことか。
そんな回答たちの中で特に説得力がありそうなものが以下。
「なぁ」「なあ」を長音と言います。昭和61年に内閣告示された「現代仮名遣い」では、あ行の長音は「あ」を添えるとなっており、「ぁ」を添えるとはなっておりません。よって、現代仮名遣いにおいては「そうだなあ」が正しいことになります。ただ、「なぁ」も巷では許容されているので、そちらでいけば間違いとは言い切れません。私も方言を表すときには、「わしゃぁ」「じゃけんのぉ」のように使っています。
そこで、現代仮名遣いの告示を覗いてみる。
5 長音
(1) ア列の長音
ア列の仮名に「あ」を添える。
例 おかあさん おばあさん
なるほど。確かに「おかあさん」を「おかぁさん」とは書かない。この告示はあくまで指針でしかないので、個々人の表記やその他の特殊な表現を対象とはしていないが、ア列の長音は「あ」を添えるという規則に従えば「だなあ」が正解である。
しかも、この告示には小さい「ぁ」が一回も登場していない。つまり、文部科学省的に正しい日本語を使う限り「ぁ」は文章内に登場しない[1]はず、ということになる。
「ぁ」の本来の使い道
では、「ぁ」はどこで使うのが正しいのか。
上のページを見た限り、アンフォーマルではない使い方は次の通り。
用途 | 使用例 |
---|---|
外来語 | ヴァイオリン、モッツァレラ、ファミリー、… |
方言 | ようけ来やぁした (名古屋弁、ようこそいらっしゃいました) ねこがにゃあとねぁた (名古屋弁、猫がニャアと鳴いた) どさいってあったぁば? (津軽弁、どこに行っていたの?) あっつぁ (津軽弁、あらまあ) などなど |
「ああ」と同意 | あぁ |
/kwa/、/ɡwa/ で「ゎ」の代用 | くぁ、ぐぁ (※「くゎ」「ぐゎ」と同様、現代仮名遣いでは用いない) |
長音で使う場合、それがアンフォーマルな使い方だということを認識すべきである。やはりちゃんとした作文なら、「だなぁ」は「だなあ」に直すべきである。
なお、おそらく擬音・擬態語も「ぁ」は「あ」に直した方がいいと思われるが、文科省の告示では明言されていないので何とも言い難い。ちなみに、「あぁ」をフォーマル寄りということにしてしまったが、辞書検索では(たぶん例外的に)「ああ」と同意扱いになっているので、辞書的には正しい日本語と認識してもよさそう。
なお、ここでの議論はあくまでちゃんとした作文やエッセイで普通の日本語を使う際の話なので、日常的な場面で「ぁ」を用いることには依然として問題はない。
脚注
- ↑ 告示では、「擬声・擬態的描写や嘆声,特殊な方言音,外来語・外来音などの書き表し方を対象とするものではない」としているため、正しい日本語の中でこれらに該当する単語等を引用する場合は、「ぁ」が登場したとしても文部科学省的な意味で間違っているとは限らない。